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東芝エネルギーシステムズ株式会社

特集・トピックス:「地上の太陽」を支える技術
夢のエネルギー・核融合発電を目指して

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私たちの暮らしに欠かせない電気。その電力を得るために、火力発電、水力発電、原子力発電、再生可能エネルギーなど様々なアプローチでインフラが整えられてきた。そして、発電に伴って発生してしまう火力発電のCO2や原子力発電の高レベル放射性廃棄物などを出さずに大規模発電ができると期待されているのが、夢のエネルギー、「核融合発電」である。

そしていま、世界の英知を結集させて、核融合発電の実験施設の建設が進められている。それが「ITER(イーター、国際熱核融合実験炉)」だ。

日本をはじめ世界7極が連携するITERプロジェクト、そして核融合発電の仕組みは「地上に太陽を作り出す!? 夢のエネルギー・核融合の最前線」にて紹介したが、本編では日本が調達するITER機器設計・開発の最前線をクローズアップ。巨大にして遠大なプロジェクトに携わる若きメンバーの奮闘、そして熱い思いに迫る。

(左から)東芝エネルギーシステムズ株式会社 原子力先端システム設計部 先端システム設計第二担当 坂口香織氏、京浜事業所 設計第三部 原子力機器開発設計担当 吉澤裕一氏、新技術営業部 新技術応用システム担当 鈴木由実氏
(左から)東芝エネルギーシステムズ株式会社 原子力先端システム設計部 先端システム設計第二担当 坂口香織氏、京浜事業所 設計第三部 原子力機器開発設計担当 吉澤裕一氏、新技術営業部 新技術応用システム担当 鈴木由実氏

「地上の太陽」を実現する巨大構造物、その設計を巡る奮闘

核融合発電は1億度以上に加熱したプラズマを利用して発電する。太陽の内部で起きている核融合反応を再現することから、「地上の太陽」と称されるほど。それだけに、核融合炉は人類史上で最も複雑な構造体として、世界各国が最先端の工学技術を駆使して開発、設計を進めている。

日本が担当するのは、超高温のプラズマを閉じ込める磁場を発生させる超伝導コイルだ。東芝エネルギーシステムズは国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(以下QST)より、トロイダル磁場コイル(TFコイル)を受注した。ITERで使用する全18体のうち、TFコイル4体と欧州で製作するコイル用の構造物6体の製作を担当。事前の製作検証を経て2014年から試作をスタートさせている。

TFコイルは高さ16.5m、幅9m、総重量300tという構造物でD字型の形状が特徴だ。5階建てビルの高さに相当するサイズながら、超高精度な製造技術が求められる。京浜事業所でTFコイルの製造に携わる吉澤氏、坂口氏にとって、この課題は難易度の高いものだった。

「D字型をした巻線部はコイルを巻いて作り上げていきますが、その長さの誤差は±0.02%。つまり、10mで±2mmという精度が求められます。縦16.5m、横9mというサイズの機器で、ここまで精度を突き詰める製品は京浜事業所内にはありません。試作を経るとはいえ、やり直しがきかない個所の製造設計、組立です。いかにして精度を担保するかがポイントになりました」(吉澤氏)

「精度だけではなく、国際プロジェクトならではのスケジュールもあります。日本はじめ各国が責任を持って機器を調達する中、限られた時間でどう進めていくのか、長いプロジェクトであってもスピード感を意識しながら進めていきました」(坂口氏)

営業部門のフロントでITERプロジェクトの入札、契約から検収に携わる鈴木氏も、チームの一体感がプロジェクトを後押しする、と語る。

「現場をスムーズにするためには、お客様であるQSTの仕様、意向を的確に伝えていかなければなりません。営業としては契約が一つのゴールですが、プロジェクトは長く続いていくものです。情報や仕様の共有に注力し、目の前の課題一つひとつに取り組んでいきました」

半世紀におよぶ核融合機器開発の知見、ノウハウをフルに生かす

吉澤氏ら設計チームは小規模な試作でトライアルアンドエラーを繰り返し、知見を積み重ねていく。ここで、エネルギー関連機器の開発で長年培ってきた東芝の設計・開発基盤が大きな力になった。

「東芝は、核融合研究が始まった1970年代から核融合関連機器に取り組んできました。ゼロから積み上げていくのは膨大な時間がかかりますが、私たちの前には先輩方が残してくれた知見、ノウハウがあります。TFコイルでいうと、巻線装置そのものは新しいものですが、基本的な構成には過去の大型コイルの製作実績が生かされています。さらに、京浜事業所だけではなく東芝内の研究所、生産技術センターの知見も活用し、文字通りオール東芝で進めてきました」(吉澤氏)

TFコイルの構成と製造工程

TFコイルは超伝導コイルの巻線部と、巻線部を収納するコイル構造物からなり、巻線部の製作は大きく6つのステップに分かれている。

各ステップには3週間程度を要し、慎重に製作が進められていく。数多くの作業工程があるため、広大な京浜事業所に各ステップの製造スペースを設け、一気通貫のラインで製造を進めていく。巻線部とコイル構造物を一体化(溶接組立、含浸)した後、巨大機器の加工設備を用いて最終機械加工を行なう。

精度とスピードを追求する上で重要な作業の1つが、随所で行われる「レーザー溶接」だ。TFコイルの製作に特化した溶接機そのものを設計するなど、大型機器の製造に実績を持つ京浜事業所の優位性が存分に発揮されている。

「精細なレーザー溶接といえども、溶接という作業によって部材が微妙に変形してしまうのは避けられません。その変形を要求精度のうちにおさめるべく、研究所や現場の溶接部門の全面バックアップのもとに進めてきました。実機と同じフルサイズの試作はできませんから、同サイズの部分試作を行いながら、解析結果を見ながら溶接の順番、部材を止めておく冶具の構成などを一つひとつ試行錯誤しながら行なっています。難易度が高くても『絶対に実現してやるぞ!』という気持ちになるのは、幾多の課題に取り組み、成し遂げてきた先輩たちの実績があるからです」(吉澤氏)

坂口氏は2年にわたってQSTに出向。ITER機構との折衝を含め、プロジェクトを外から俯瞰して見守ってきた。東芝の過去の知見を生かして設計に臨みつつ、核融合発電研究の先端を行くQSTとのパートナーシップの重みを感じている。

「TFコイルの1体目を作っても、2体目が同じようなルーティンで進められるわけではありません。まだあったのか……! と、技術的な問題と向き合う日々です。しかし、現場の作業を止めることはできません。1体目から多くの課題をクリアしてきただけあって、リカバリー対応のスピードは確実に上がっています。QSTの担当者も毎週のように京浜事業所にいらっしゃり、熱意を持って課題解決を一緒になって考えています。設計部隊と製造現場、営業メンバー、そしてQSTの方々も含め、ひとつのチームとして進んでいます」(坂口氏)

オール東芝、オールジャパンで次世代の発電を目指していく

ITERのファーストプラズマ(運転開始)は2025年に予定されており、実際に核融合反応が開始するのは2035年以降と見込まれる長期のプロジェクトだ。しかも、ITERそのものは実験炉。実験が順調に進めば、実際に核融合発電を行なう原型炉の建設が視野に入る。

「技術開発部門はオール東芝で臨んでいますが、このプロジェクトは設計・製造・営業のみならずQSTも足並みを揃え、一体になって進められています。東芝の核融合開発は長い実績があります。過去から現在へ、そして次代へとつなぐことを強く意識しています」(鈴木氏)

「QSTの担当者からは、品質面では高い評価をいただけています。それらの信頼、そしてこれまで取り組んできた先輩たちの期待を裏切ることなく、大きなプロジェクトで得た経験、知見を引き継いでいけたらと考えています」(坂口氏)

「私がITERに携わって8年になりますが、手がけている巻線部もコイルケースと一体化させて初めて製品になります。TFコイルすべてを完成させるまでの工程はまだ長く残っています。現地に据え付けられ、そして実際に運転が始まり、『東芝のコイルは良かった』と言われるまで、高い意識を持ってものづくりに励んでいきたいですね」(吉澤氏)

核融合発電の研究はもちろん、設計や開発現場でも取り組むべきことは山積しているが、未来のエネルギーを「夢」から現実にするために、ITERが人類の大事な一歩となる。日々の業務に励みつつ、目線は高く次代を見すえるフロントメンバーが旗手になるだろう。

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