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東芝エネルギーシステムズ株式会社

特集・トピックス:先端技術を駆使して限られたスペースに安全設備を設計する
ー女川原子力発電所フィルターベント設置への挑戦

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先端技術を駆使して限られたスペースに安全設備を設計するー女川原子力発電所フィルターベント設置への挑戦

格納容器・安全の要「フィルターベント」

福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、より一層の安全対策が求められる中、注目を集めているのが「フィルターベント」という設備です。原子炉格納容器内の圧力が高まった時、水蒸気や水素を外に逃がすことで格納容器の破損を防ぐベント操作を行いますが、その際に排出される放射性物質を大幅に低減する役割を担っているのがこの「フィルターベント」。女川原子力発電所2号機では新規制への適合と再稼働に向け、東芝によるフィルターベントの設置工事が進んでいます。工事計画を立案した桝田祐貴さんに話を伺いました。

(フィルターベントを設置する原子炉建屋概略図と、実際に女川原子力発電所2号機で使用される予定のフィルターベント装置本体)
(フィルターベントを設置する原子炉建屋概略図と、実際に女川原子力発電所2号機で使用される予定のフィルターベント装置本体)

前例のないフィルターベント設置業務と新たな挑戦

2008年1月に東芝に入社した桝田さんは国内原子力発電所の原子炉内部保守点検業務を担当。
「機械系の技術者として、原子炉の内部を見られる機会は、原子力安全を担う一員となった実感とともに、技術者冥利に尽きるものがありましたね。」
原子炉の設計業務も担当するようになり、海外赴任中に東芝製ジェットポンプインレットミキサへの交換据付工事を完了。海外から見た東芝の事業への反応は大きなものがあったといいます。
「現地では特に東芝のものづくりの品質を高く評価していただきました。」
そして2013年には日本国内に前例のなかったフィルターベントの設置プロジェクトを担当。新設する地下ピットにフィルターベントを設置するという方式の初号機の設計から携わりました。そしてこれとは設置方式が全く異なる今回の女川原子力発電所2号機のフィルターベント設計業務に取りかかる事となりました。

配管や計装装置とレイアウトを最適化し、装置本体を設計、解析することが私の主な担当ですが、システム全体のコンセプトやスケジュール管理も含めプロジェクト全体に広く関わってきました。プロジェクトでは、装置本体や配管、計装装置、電気設備の各専門家が関わりあって設計を進めていきます。続いて工事計画や施工の専門家も交え、据付方法の検討へとエンジニアリングを進めていきます。」

最大の課題は「狭隘なスペース」

女川原子力発電所2号機へ設置するフィルターベントの設計がスタート、しかし早速課題にぶつかります。
「今回のフィルターベント設置における最大の課題、それは設置スペースの問題でした。」

一般的には、フィルターベントのような大型の装置は、新設した建屋に屋根のない状態で据付し、据付が完了した段階で屋根を作るという "装置を先入れする工法" が基本。しかし今回の女川原子力発電所2号機では新たに建屋を設置する余剰スペースは存在せず、既存スペースから設置可能箇所を見つけ出して、フィルターベントを設置する必要がありました。限られたスペースの中で設置候補として浮上したのは、原子炉建屋内にあったメンテナンス用の部屋。ここに、"装置を後入れする工法"が必要とされました。

「社内でもさすがにこのスペースに設置するのは無理だろう、といった声も上がりました。本当にこのスペースで実現できるのか精査する必要がありました。」
小さな空間に巨大な設備を入れる...課題の解決には大きな発想の転換が必要でした。

「最大のネックは機器自体のサイズです。この問題には、装置本体を3基に分割しそれを並列運転するシステムを構築することで解決しました。3基を大きな1基として捉える事で収納性と性能を両立しています。」

さらに考慮しなければならない課題は装置本体に留まりませんでした。

「東日本大震災級の揺れにも耐えられるようにするため、頑強な支持構造物が必要とされ、このことも配置を難しくしました。さらに、もともとある構築物に取り付けて荷重をかけるが故に、もともとある構築物を調査、評価しながら設計する必要があったため、支持構造物を取り付ける場所が限られるなどの多くの制約条件が重なりました。配置は何度も見直し、その都度プロジェクトメンバ全員でレビューしました。」

据付計画も3D CADでシミュレーション

1つの部屋にフィルターベントを設置できそうだということは、各設備を配置してみてなんとかわかりましたが、あくまでも可能性が見えた段階。ここからさらに問題となるのは "据付" でした。

(3D CAD上で計画されたフィルターベントの設置イメージ)
(3D CAD上で計画されたフィルターベントの設置イメージ)

「最近の建設プラントでは、現場での作業を少なくして工期を短縮するため、なるべく多くの装置を広い場所で組み上げて据付するモジュール工法がとられます。今回はフィルターベントシステム全体を丸ごと入れることはできないため、パーツを搬入可能な大きさに分けて1つずつ搬入して据付する必要があります。その制約の中でもなるべく大きなパーツとなるようにして現地工程が短くなるように据付計画を検討しました。搬入する一番大きなものはフィルターベントの装置本体そのもので、高さ6m、直径2.6mほどもあります。それぞれ3D CAD上でシミュレーションさせながら確認する必要がありました。据付の際にはさらに既存の設備自体も気にかける必要があります。」

「フィルターベントを据付するために、干渉しそうな既設の構造物を改造したり、既存の配管などがどうしても干渉してしまう場合は、配管をルート変更することで問題が発生しないようにする作業も行いました。」

「一度作ったプラントを、ここまで大規模に改造する例は、かなり珍しいものだと思います。フィルターベントは電力会社様からは常に高い関心を持っていただいているシステムです。再稼働に向けた安全対策の中でも大きな役割を担うシステムということで、大きな期待をいただいていますので、ハードルは高いですが、やりがいのあるプロジェクトだと思っています。」

東芝エンジニアは "議論を尽くして答えを見つける"

これだけ込み入ったプロジェクトを進められる原子力事業部のエンジニアリングチームには、一つの特徴があると桝田さんは語ります。

(磯子エンジニアリングセンター CAD室での設計内容レビューの様子)
(磯子エンジニアリングセンター CAD室での設計内容レビューの様子)

「チームのメンバーは個性的な人が多いですね。それは各々が持っている技術力の裏返しなのかもしれませんが、意見をぶつけ合える関係である事が良い事だと思っています。ぶつかってもぶつかっても、最後まで議論を尽くして、答えを見つける。それでもゴールが見えない時も "じゃあお客様はどういうものを求めているの?" というところは必ず見つめ直すようにしていますね。」

さらに原子力事業部のエンジニアリングを支える要素として桝田さんは「磯子エンジニアリングセンター」を挙げます。

「磯子エンジニアリングセンターでは各分野の専門家が英知を結集して次々と問題を解決しているわけですから、その専門家の多様性、そして技術力の維持は今後も期待したいことです。あともう一つ素晴らしいのは、技術者が連携できるインフラが整っていることです。今回であれば3D CADでシミュレーションを行いましたが、磯子エンジニアリングセンターでは壁一面にわたるサイズのレビュー設備がありまして、チームの人間が実物をイメージしながら検討することができます。」

「組織としてフラットであるというのも特徴だと思います。"技術の話をするなら上下は関係ないよね" と言ってくれる上司が多いという印象がありますし、技術を追求するエンジニアには大変ありがたい環境だなと思います。」

安定して電気を供給する "当たり前" を支え続ける仕事

今回のようなプロジェクトにおいて、東芝はどのようなところにあらわれていたのでしょうか。

「プラントのエンジニアリングを一気通貫でできるというのは東芝だからこそです。今回もそうですがプランニングから製造、現地での工事、試験に至るまですべてにおいて携わる事ができることが大きな強みですね。」

最後に桝田さんが東芝で働く姿勢や想いについて伺いました。

「社会貢献をしていきたいという気持ちは強いですね。当たり前のように使える電気、それは電力会社さんの尽力のうえに安定供給されているわけですが、それをさらに後ろ側でエンジニアリングやものづくりをして支えることにやりがいがあると思っています。」

女川原子力発電所2号機に設置予定のフィルターベント装置本体の製造は現在完了し、設置工事はこれから本格化するとのこと。桝田さんたちのプロジェクトが設計したシステム、そして東芝のチャレンジが、日本の安定した電力の未来を支えます。

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