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東芝エネルギーシステムズ株式会社

特集・トピックス:逆境をチャンスに!
受け継がれる超電導技術の未来とは?

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特定の金属などを極めて低い温度にすると電気抵抗がゼロになり、電気をたくさん流せるようになる現象、超電導。超電導状態になった金属は高磁場を発生させるため、線材にしてコイルにすることで、強力な磁石になる。

超電導技術はどのように継承され進化し、どのような未来へと向かっているのか。前回に続き、1980年代から超電導技術に携わるベテラン技術者の住吉幸博氏と、超電導の「今」を支える高見正平氏との対談を通し、開発の最前線に迫る。

京浜事業所 原子力機器装置部 住吉幸博氏(左)、同 高見正平氏(右)
京浜事業所 原子力機器装置部 住吉幸博氏(左)、同 高見正平氏(右)

低迷期に生み出した画期的な技術

――前編では、患者の負担を減らす東芝の重粒子線がん治療装置についてお聞きしました。今回はその技術についてより詳しく伺います。

高見氏 この技術には、私が入社2年目の2007年に携わった、シリコン単結晶引上げ装置向けに使われる超電導磁石の開発が大きく関わっています。まずは重粒子線がん治療装置用の前にシリコン引上げ用超電導磁石からお話しさせてください。

――半導体製造では材料となるシリコンを1,000℃以上の高温で融解させます。その後、結晶となったシリコンを回転させながら引き上げますが、そこで超電導磁石を使用し、その性質をシリコン引上げに活用しているのですよね。

シリコン引き上げに超電導磁石を使用することで、シリコン品質の低下を抑えることができる
シリコン引き上げに超電導磁石を使用することで、シリコン品質の低下を抑えることができる

高見氏 そうです。当時、シリコン引上げ用の新しい機種を開発してほしいと言われ、開発チームに配属。半導体の需要が伸びている頃で、順風満帆でした。

しかし2008年に風向きが変わりました。リーマンショックによって半導体用シリコンの需要が大幅に減少したのです。ちょうど開発が一段落ついたときの出来事で、なかなか装置の買い手がつかない状況でした。

高見氏
高見氏

住吉氏 事業として最も厳しい時期だったよね。でも、この時期に高見さんらが行った開発は画期的なものでした。

実は、シリコン単結晶引上げ用は超電導技術としての難易度からしてみれば、さほど高くはありません。ただ、汎用品であるシリコン引上げ用ならではの課題がある。それは装置を安く作らなければいけないということです。

高見氏 そうなんです。品質を保ちつつ価格を下げる難しさに加え、汎用品は、ある製品と同じものを作ろうと思えば、他社が簡単に安く生産できてしまうというリスクもあります。

そこで東芝にしかできない技術を織り込みつつ安く生産することが必須。そこで従来、超電導磁石は丸い磁石をコの字型にしていたのですが、円筒型の容器に曲がったコイルを入れることによって、超電導線を約40%削減できる技術を開発したのです。

磁石の形を変え、超電導線を削減
磁石の形を変え、超電導線を削減

そうすることでコストを削減でき、低価格化につなげることが可能に。私にとっての最初の開発機器であり、新しい世代の半導体に貢献しようと張り切っていたのを覚えています。

住吉氏 高見さんらが開発したもう一つの技術も注目に値するものでした。超電導状態を生み出すには液体ヘリウムを使って約-269℃に冷却する必要があります。しかし1990年代から液体ヘリウムの価格が高騰し、安定的な供給が得られないという問題が世界的に起こりました。

そこで東芝が生み出したのが冷凍機を超電導磁石につけることで、液体ヘリウムを使わずに冷やす、液体ヘリウムフリーの技術。これは東芝の超電導技術におけるキー技術です。

液体ヘリウムフリーの技術
液体ヘリウムフリーの技術

高見氏 類似設計であれば、過去の計算式を見ながら設計すればよいのですが、新技術なので初めから設計する必要があり、技術者としてとても勉強になりました。

そしてこの2つの技術こそが、その後、開発した重粒子線がん治療装置回転ガントリー用磁石において、不可能だといわれていたことを可能にしたのです。

ガントリーを回転?!誰もが驚いた新発想とは

――2010年頃、放射線を発生させ、がんの患部に照射を行う構造体「ガントリー」に使用される超電導磁石の開発に携わったと前編で高見さんからお聞きしました。ガントリーを小型化して回転させることで、患者の身体を傾けなくても治療できるようになったのでしたよね

重粒子線がん治療装置 回転ガントリー(協力:量研/放医研)
重粒子線がん治療装置 回転ガントリー(協力:量研/放医研)

高見氏 実は、このガントリー用の超電導磁石に、シリコン引上げ用で培った技術を応用したんです。シリコン引上げ用ではコイルの形を変形させましたが、この形をさらに改良し複雑化させると、ガントリー用の磁石になります。超電導線が少なくて済むため、より小型化できたのです。

シリコン引上げ用の技術が応用された
シリコン引上げ用の技術が応用された

加えてヘリウムフリー技術もここに生かされました。実は、従来、「超電導磁石を搭載したガントリーを回すなんてクレイジー」と言われていたんです。それもそのはずで、超電導状態にするためには液体ヘリウムが必要です。磁石を逆さにして、万一液体ヘリウムがこぼれるとなると、大変な事故になりますから。

しかし、シリコン引上げ用磁石の開発時に生み出した、冷凍機を使って超電導状態を作り出す技術のおかげで、誰もがクレイジーだと思っていたことが実現しました

ガントリー回転試験。青いアーチ部分が超電導磁石。(協力:量研/放医研)

住吉氏 リーマンショックに伴う厳しい事業背景の中でも、技術を維持してきたことが、今の東芝の超電導技術につながっているのです。逆に言えば、私たちは超電導技術を次の世代へと継承していく義務があると思っています。

入社したての頃、私は超電導開発を始めていた先輩たちから、様々なことを教わりつつ、超電導技術に携わっていました。そのような中で東芝の超電導が成長していったのです。

だから、次の世代の高見さんに技術をきちんと伝え、高見さんにはさらにそれよりも若い技術者に継承していってほしいという気持ちを強く持っています。東芝には技術を継承していく土台があるはずですから。

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