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東芝エネルギーシステムズ株式会社

特集・トピックス:保守サービスに秘める自信と誇り
-火力発電所震災復旧の裏側編-

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保守サービスに秘める自信と誇り
-火力発電所震災復旧の裏側編-

3月11日――どれだけ年月が経とうとも、決して忘れてはいけない日がやってくる。日本の観測史上、最大規模とされる東日本大震災による揺れ、津波、それらが引き起こす火災。様々な被害が発生したが、人命救助と被災者の安全確保が進められる中で、電力インフラの速やかな復旧も求められていた。

電気は私たちに光と熱、そして情報を供給する。現代社会にとって不可欠なライフラインだ。2011年、東日本大震災の津波で大ダメージを受けた火力発電所はいかにして復旧したのか。管轄する電力会社による電力確保に向けた取り組みの下、保守サービスが果たした役割に迫った。

東芝エネルギーシステムズ株式会社火力・水力事業部 火力サービス技術部 部長 高木健太郎氏火力・水力事業部 火力フィールド技術部 部長 土井口辰也氏
東芝エネルギーシステムズ株式会社
火力・水力事業部 火力サービス技術部 部長 高木健太郎氏
火力・水力事業部 火力フィールド技術部 部長 土井口辰也氏

東日本大震災発生! その時、太平洋沿岸の火力発電所では何が起こったか

ボイラーで石炭、石油、天然ガスなどの燃料を燃やし、水を沸騰させた蒸気によってタービンを回し、発電する火力発電所。様々な発電方法が登場しているが、電力を安定して供給するために火力発電は欠かせないピースである。

発電プラント、そして発電機やタービンなど火力発電の主要機器の製造を手掛ける東芝は、納入後の保守サービスも充実させてきた。東芝エネルギーシステムズ株式会社 火力・水力事業部 火力サービス技術部 高木健太郎氏、火力フィールド技術部 土井口辰也氏らは既設の火力発電所で本来のミッションの根本である予防保全として、保全計画や定期的な点検整備に携わりながら、トラブル発生時には事後保全として機器の復旧サービスも担う。

未曾有の大災害、東日本大震災ではどんな役割を担ったのか。時計を2011年3月11日に戻し、福島県南相馬市の東北電力株式会社 原町火力発電所にフォーカスして、電力会社、協力会社、機器メーカーと志を一つにして再稼働までを支えた保守サービスエンジニアたちの対応から振り返ろう。

「東北地方で停電が起こっている――この一報で事態の深刻さを感じました。送電網がしっかりしている国内で、地震による停電は非常に稀なことだったからです。東北地方を中心に電力インフラに大きな被害が出ていることがニュースでも明らかになりました。首都圏でも電力の使用制限が求められる中、発電機器を製造している東芝の京浜事業所もフル稼働できず、手探りの状態が続いており、復旧関係の業務に携わる製造ラインだけが稼働を許される状況でした」(高木氏)

時間が経つにつれ、太平洋沿岸の火力発電所の被災状況が明らかになってきた。最も甚大な被害を受けたのが東北電力株式会社 原町火力発電所だ。地震発生後に大津波警報が発令されたが、運転中だった1号機(1000MW,タービン・発電機は東芝納入)は、電力の安定供給のために運転を継続していた。 その後、津波来襲を確認して避難のために止む無く緊急手動停止を実施した。

発電所を襲った海抜18mの津波により所内の交流電源、バックアップの直流電源が共に喪失したため、惰性で回転していたタービン・発電機への潤滑油供給がストップし、ローターが焼き付いてしまった。また、多くの補機類が設置されたタービン建屋1, 2階まで浸水したため,タービン・発電機設備全体は壊滅的なダメージを受けてしまった。

原町火力発電所は福島第一原発から30km圏内にあり、立ち入り制限区域のため、しばらくの間被災状況を目視することもできなかった。あまりに甚大な被害であったが、原町火力発電所をもう一度動かしたい――そんな想いを胸に、保守サービスチームは現地へ向かった。

想いはひとつ! 未曾有の大被害からリスタート

「電力会社によるがれきの撤去、危険個所の区画整理、通路の確保など多大な努力もあって、震災から2週間後に現地の安全が確認されたため、マイクロバスをチャーターして現場へ。ガソリンスタンドに長蛇の列ができる中、燃料の調達も一苦労です。持参した食糧をガスコンロで温め、まだシャワーが使用できないホテルに素泊まり。厳しい状況の下、発電所の被災状況を確認していきます。被災直後に手を付けられなかったこともあり、タービンの被害は想像以上にシビアなものになっていました」(土井口氏)

蒸気タービンは羽根の先端部が飛散し、約160トンものローターを支える軸受も溶融して損傷。水没した機器や配管にしばらく手を付けられなかったことで腐食も進んでいた。しかし、保守サービスチームは設計者による現地調査を数回に渡って実施した。被害が比較的少なかったため先行で復旧を進められた被災発電所の知見を盛り込み、原町火力発電所の復旧へのロードマップを見出していく。

「保守サービスに携わる者として『電気を止めるな』が私たちの信条です。現地調査から発電再開の可能性が感じられたこともあり、前例にない工事ですが、電力をまた供給できるようにするため、電力会社、協力会社、機器メーカーと志を一つにして進み始めたのです」(土井口氏)

工事の支援、部材の手配や日々発生するトラブル対応のため、土井口氏は現地に駐在した。当初は福島市内から3時間をかけて路線バスで通った。避難先から学校に通う高校生たちとバスに揺られ、村全域が計画的避難区域に指定された地域を通る。発電所の復旧に従事する人たちの多くも、自宅や家族が被災していた。

1日でも早く、原町火力発電所を動かすために。土井口氏らメンバーは社外との連携にも注力した。火力発電所の蒸気タービンは高温・高圧の環境にさらされるため、用いられる鉄鋼材料一つとっても特殊な成分で、オーダーメイドに近い仕様で作られている。通常でも納期は1年以上。しかし、緊急事態ということでスピードアップを要請し、必要な資材、部材を一つひとつ揃えていく。時には、現地入りができない機器メーカーの代行で現地調査も行った。

「機器メーカーや部品・素材メーカーなど、改めて多くの取引業者と協力して発電プラントを作り、保守しているのだと実感しました。彼らに『発電所をいち早く復旧させたい。そのために無理を言うが、何とか協力してほしい』と情熱を込めて伝えていく中で、改めて復旧への思いを強くしました」(土井口氏)

「震災復興に向け、復旧させたり、停止中だった発電所を再稼働させたり、タービン出力を増強させたり、急きょ新しい火力発電所を建設したりと、各電力会社による電力確保のための取り組みの下で同時に十数箇所の火力発電所に携わっていました。ホワイトボードにそれらの発電所の対象号機名がずらりと並ぶ中、稼働したものは花丸を書いて達成度を可視化していました。まるで選挙対策本部のようだね、と励みにしていたのですが……最後まで残った原町火力発電所に花丸をつけられる日が、ついにやってきました」(高木氏)

2013年1月28日、原町火力発電所の発電(試運転)がついに再開された。震災発生から1年10か月を経ての再稼働だった。これまで培ってきた保全技術や運用ノウハウの結集だ。そして、それはお客様や取引業者とのたくさんのコミュニケーションの集積でもある。

再開できたときは、涙が出るほどうれしかったですね。計器が一つ作動しないだけで発電所は運転できない場合もあります。復旧を通じて、社会や私たちの暮らしを支える発電所の存在、それを支える仕事にやりがいを感じました。再稼働時の記念写真に多くの方々が写っていますが、これは関わってくれた方のほんの一部にすぎません。私たちは最後まで見届けられましたが、この他にも各工程で東芝の他部門、そして取引業者の方々と、一緒に汗を流して再稼働に取り組んだ人たちがたくさんいます。機器に向き合い、思い通りに復旧が進まず頭を悩ませましたが、結局、最後は『人』なんですね。関係する方々が志を同じくして協力し合い復旧を実現させたのです。協力いただいた一人ひとりにとても感謝しています。」(土井口氏)



もちろん、保守に携わるメンバーの仕事は震災復旧だけではない。通常の保全支援も世界規模で展開してきた。2013年3月には、マレーシアの火力発電所で蒸気タービンにトラブルが発生。ローターの交換が急務となった。

「お客様にとって非常に重要な発電所ですから、1日も早く納品するために特殊材料の調達納期を短縮したり、先に手配済みであった他製品向けの素材を転用して工場内の工程を組み直すなどの調整を行うことで、他製品の納期に影響を与えることなくお客様に指定された納期に間に合わせることができました。また、大きなローターは船で海上輸送するのが一般的ですが、納期を最優先するため、ロシア製の巨大輸送機をチャーターして空輸するという手段を取りました。
この結果、当初見積もっていた納期の12か月を6.5か月に短縮してローター2本を製造、納品することができました。

「『日本では東日本大震災の復旧があるのに手が回るのか』というお客様の不安を解消して超短納期を実現できたのは、製造現場や取引業者、そしてお客様との連携があってこそです」(高木氏)

日本だけではない。世界でもその地域の電気を止めてはいけない。そんな使命感を胸に保守サービスエンジニアは火力発電というインフラを支え、その先にある人々の暮らしを見つめる。

「保守サービスも時代と共に進化しています。IoT時代が到来し、発電所の機器の動作、経年状況などが逐一モニタリングできるようになりました。これは、トラブルを未然に防ぐ『予防保全』につながります。火力発電所は30~40年という長いサイクルで保全計画を立て、定期点検を行っていくものですが、常に新しい技術、知見を盛り込んで提案し、インフラを支えていきます。なぜなら、社会に貢献していくのが私たちの使命であり、仕事であり、そして喜びだからです」(高木氏)

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