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東芝エネルギーシステムズ株式会社

特集・トピックス:世界のエネルギー事情を変える技術 「直流送電」は何がすごい?

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世界のエネルギー事情を変える技術 「直流送電」は何がすごい?

電気の流れには「直流(※1)」と「交流(※2)」の2種類があることはご存じだろうか。両者の性質は電気が流れる向きと大きさ(電流)、勢い(電圧)で区別されるのだが、具体的にどう使い分けられているのか、細かな仕組みまで理解している人は意外と少ないかもしれない。

多くの電気機器では、乾電池の「+」と「-」を逆にしてしまうと電気が流れないというのは誰しも知っていることだが、これは決められた一方向にしか電気が流れない性質を持った直流を使っているために起こる現象だ。私たちにとって欠かせないスマートフォンに使われている充電式の電池も直流である。

一方、私たちが壁のコンセントにプラグを挿して使っているのは、交流の電気である。交流は電流や電圧の向きが常に入れ替わる性質をもち、乾電池と異なり、「+」と「-」が決まっていないため、どの向きでプラグを挿しても電気が通る仕組みになっているのだ。発電所で作られた電気は、送電線や配電線を経由して家庭のコンセントまで届けられるのだが、その間を流れているのはほとんど交流の電気である。

このように、直流と交流はそれぞれ特有の性質があり、それぞれの特長を生かして使い分けられていることを、頭においておきたい。

※1 直流:電気が流れる向き、大きさ(電流)、勢い(電圧)が変化しない電気の流れ
※2 交流:電気の流れる向き、大きさ(電流)、勢い(電圧)が周期的に変化している電気の流れ

エジソンvsテスラの電流戦争

「歴史をひもとけば、世界で初めて送電システムを開発したのは、白熱電球を発明したトーマス・エジソンです。エジソンは白熱電球をニューヨークで普及させるために、電力網の整備に着手し、この際に用いられたのが直流送電でした。その後、ニコラ・テスラによって交流送電の技術が開発されると、どちらが送電に適しているのかを競う『電流戦争』が起こりました。この争いは、変圧器を使えば自由に電圧を変換できるという利点により、テスラが開発した交流が勝利を収めたのです。」

そう解説するのは、東芝エネルギーシステムズ株式会社・電力流通システム事業部の高木喜久雄氏だ。

東芝エネルギーシステムズ株式会社・電力流通システム事業部 高木喜久雄氏
東芝エネルギーシステムズ株式会社・電力流通システム事業部 高木喜久雄氏

電気はつくられた場所と使われる場所(需要地)が離れていることが多い。そのため、発電施設でつくられた電気を遠くに送るためには、途中で電圧を上げ、電気を送る力を与える操作が必要になる。しかし、エジソンの時代には、まだ直流の電圧を調整する技術がなく、これが交流送電の普及を後押ししたのだという。

一方で交流は、効率よく送電することが可能で、しかも変圧器を用いることで、使用する機器にあった電圧に簡単に調整することができた。こうした経緯があり、現在コンセントから取れる電気は交流となっている。高木氏は「交流が今後も送電の主流を占めることは間違いないでしょう」と言う。

しかし、半導体の技術が交流を直流に変換することを可能とし、様相はにわかに変わってきた。ここで押さえておくべきは、長距離にわたって大容量の電気を送るのに適しているのは実は直流送電であるということ。洋上風力発電のような遠方からの送電、離島への送電、地域間で電力を融通しあうような場合に、直流送電が注目されている。技術の進歩により、直流・交流の特性に合わせた使い分けが実現したことで、電気の活用の幅が大きく広がったのだ。

各地のエネルギー問題の解決や、世界的に推進されている再生可能エネルギーの普及を後押しする可能性を秘めている直流送電とはどのようなものだろうか。

直流送電が世界のエネルギー事情を変える!?

「交流送電の場合、送電施設に必要なのは変圧器だけで済みますが、直流送電施設にはこれに加えて直流から交流へ、交流から直流に変換する変換器が必要となります。つまり送電設備のコストで見れば、交流送電のほうが有利です。しかし、例えば海底ケーブルを通して50キロ、100キロといった距離を送電することは、送電中に電力ロスの大きい交流では不可能なのが実情。その点、直流であれば1,000キロでも2,000キロでも、技術的に無理なく送電できます」(高木氏)

つまり、送電と受電の双方に然るべき設備が整えば、送電できる距離と範囲は拡大することになる。実際、東芝ではこうした特性を生かし、高電圧直流送電(HVDC)の技術をさまざまなシーンで活用中だ。その具体例の一つがイタリアにある。

「イタリアでは、昨今の問題から原子力発電所の新規建設が困難で、安定的な大規模電源の確保に悩まされています。そこで、イタリアのチェパガッティとモンテネグロのコトルをアドリア海を挟んでおよそ400キロの距離を海底ケーブルで結び、主にモンテネグロ側から電気を送るプロジェクトが立ち上がり、2017年現在建設工事を進めています」(佐藤氏)

東芝エネルギーシステムズ株式会社・電力流通システム事業部 佐藤純正氏東芝エネルギーシステムズ株式会社・電力流通システム事業部 佐藤純正氏
東芝エネルギーシステムズ株式会社・電力流通システム事業部 佐藤純正氏

モンテネグロ側で発電した交流の電気を直流に変換し、海底ケーブルを通してイタリアの変換設備に送電、そこで再び交流に変換する。これによって400キロの距離を越えた再生可能エネルギーの電力供給が可能になった。低炭素化への流れで、再生可能エネルギーを利用する便益が評価されての投資である。数年越しの大規模プロジェクトだが、これによってイタリアの電力事情は今後、大きく変わっていくだろう。

イタリア〜モンテネグロ間約400kmを海底ケーブルで繋ぐ
イタリア〜モンテネグロ間約400kmを海底ケーブルで繋ぐ
変電所の完成予想図(CG)
変電所の完成予想図(CG)

こうした直流送電技術の浸透は、さらに世界のエネルギー問題の解決に深く関わることになるはずだ。

「日本の再生可能エネルギーは現在、北海道や九州などで活発に発電が進められていますが、すでにそれぞれの地域だけでは使い切れないほどの発電量になる場合があります。そこで需要の高い東京や大阪などの大都市圏への長距離送電が可能になれば、一層再生可能エネルギーの活用は進むでしょう。」(高木氏)

現状、太陽光発電や風力発電は直流で発電されている。これをそのまま、距離を問わずに需要地へ送ることができれば、再生可能エネルギーの促進に大きく貢献するだろう。周囲を海に囲まれた日本列島においては、洋上風力発電普及の後押しにもつながるかもしれない。

折しも昨年、WWFジャパン※が2050年までにすべての電力を自然エネルギーで賄うという、長期目標を策定したばかり。これを実現するには、交流送電の技術だけでは困難なのは言わずもがなだ。

※WWFジャパン:世界最大規模の自然環境保護団体

もちろんコスト面の問題は無視できないが、既設の送電網を生かしつつ、要所で変換設備を活用する視点を持てば、次世代の電力網づくりが現実味を帯びてくる。直流送電と交流送電、双方の特性を生かしたベストミックスの姿を追うことが、理想の社会環境につながるのかもしれない。また投資と便益のバランスが重要だが、便益に関する評価や価値は時代で変化するので、未来を見越した社会インフラ投資が重要だろう。

【出典】TOSHIBA CLIP (https://www.toshiba-clip.com/detail/4794

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